ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 Stage 152026年9月7日文: Grand Tour Hub 管理人

猛暑でコースが4割短くなった日、先頭5人のうち緑のジャージが勝った

パルマ・デル・リオ → コルドバ 110.2km(中級山岳/獲得標高1,797m・Cyclingnews調べ。当初は189.7kmでしたが、前日に79.5kmが削られました。実際に走ったコースの格付けのついた山は2つで、どちらも3級です。34.5km地点のプエルト・デ・ラ・フォレスタル(6.7km・平均4.1%)と、73.6km地点のプエルト・アルタフィ(5.9km・平均5.5%)。中間スプリントは78.9km地点。そのあと格付けのない上りをひとつ越え、残り18kmから街へ下ります)

スタートの前日、この日のコースから80km近くが消えました。189.7kmの予定が110.2km——4割ほど短くなった理由は、暑さです。 選手のサイクルコンピュータが示した平均気温は41℃。勝ったのは、その日ずっと集団の先頭で逃げを追っていたチームの選手でした。

33S
パルマ・デル・リオを出てからの28kmはほぼ平坦。そこから3級プエルト・デ・ラ・フォレスタルを登り、標高500m前後の高みをたどります。削られたのはこの先の北側の周回で、選手は52.3km地点で右へ折れてコルドバを目指しました。3級プエルト・アルタフィのあとに中間スプリント、さらに格付けのない上りをひとつ越えて、残り18kmから一気に街へ下ります 3級山岳 プエルト・デ・ラ・フォレスタル残り75.7km地点 3級山岳 プエルト・アルタフィ残り36.6km地点 中間スプリント サンタ・マリア・デ・トラシエラ残り31.3km地点

📊 今日のデータ

シーズン集計を見る →
スタート晴れ 40.7℃・風3.2m/s
ゴール曇り 39.9℃・風1m/s
逃げ11人 → 捕獲
決着少人数の勝負(ワウト・ファンアールト)
総合エンリク・マスが首位堅持(+126秒)
完走150 / 150人
敢闘賞アンドレアス・レックネスン(#136・Uno-X Mobility)

前日の話し合いでコースが79.5km短くなり、山がひとつ消えた

この日のコルドバには、40℃を超える予想が出ていました。前日の土曜日、審判団・チーム・選手・主催者の代表が集まって話し合い、ブエルタは極端気象プロトコを発動します。

削られたのは79.5km。当初189.7kmだったコースは110.2kmになりました。レースは当初のルートを52.3km地点まで走り、そこで右へ折れてコルドバへ向かいます。北側をまわる周回と、そこにあった3級の山がひとつ消え、格付けのついた山は3つから2つになりました。実際に走るぶんの獲得標高は1,797m。スタートも遅らせ、選手がパルマ・デル・リオを出たのは現地時間の14時50分です。

この話し合いに選手の側から出るのは、いまそのレースを走っている選手本人です。ブエルタ2026の代表は3人。開幕時の3人は、いま総合首位の赤いジャージを着ているエンリク・マと、ユーゴ・ウジャコポ・モスでした。ウルは前日の第14ステージで自転車を降り、マスは「レースのこの先に集中しないといけない」と土曜の会議には出ていません。いまの3人は、モスカ、ステフェン・クライスヴァイ、そして総合2位のフェリックス・ガです。

そのマスは、レースのあとでこう話しました。「とてもきつい一日だった。この気温のせいで距離を切り詰めなければならなかったし、この酷暑を思えば、それはありがたいことだ」。そして、こう付け加えています。「たとえ80km長かったとしても、勝ったのは同じ選手だったと思う」

🔰 初心者向けメモ: CPA——選手の側に座る人たち

レースを短くするかどうかは、主催者がひとりで決めるわけではありません。審判団、チーム、そして選手。この3者と主催者が同じ席に着きます。

選手側の窓口になるのがCPA(選手会)です。大会ごとに選手代表が選ばれ、その代表が席に着きます。3週間を走りながら、走る条件の話し合いにも出る。ロードレースの選手会は、そういう形で動いています。

出典:Vuelta a España stage 15 shortened by 70km to protect the health of the riders in extreme heat — Cyclingnews'If the stage had been 80 kilometres longer, I think the same rider would have won' — Cyclingnews

11人が前へ出て、そのひとりは「生き残っている」と言った

短くなったぶん、レースは最初から速く進みました。飛び出しては吸収され、を繰り返したすえ、最初の上りに着く前に11人が先行します。フレデリク・ワンダーイヴォ・オリヴェイシャビエル・アスパレエンゾ・パレイーサン・ヘイタアンドレアス・レックネスルディ・ポータアラステア・マッケラファビアン・ヴァイルーベン・トンプソハイス・レイムライ。このうち、最後の5人まで残るのはレックネスンひとりです。

ただしヴィスマ・リースアバイクは、この11人と集団の差が1分を超えないように抑え続けます。逃げを捕まえてスプリント勝負に持ち込みたいコフィディスも、先頭で牽引を手伝いました。3級プエルト・デ・ラ・フォレスタルの頂上では、差は35秒まで詰まっています。集団からはゲオルグ・シュタインハウザが単独で追いつきました。そのずっとあと、格付けのない上りでペースが上がった隙に、ミヒャエル・ゴグもひとりで前へ出ました。ゴグルのアルペシン・プレミアテックは、8人で始めたこの大会を、すでに3人で走っていました。前日にユーゴ・ウルが降りたばかりです。

11人のひとり、ヘイターにとっては、ここに乗れたこと自体が大きな意味を持ちます。開幕モナコの9.4kmのタイムトライアルでは、世界王者のタデイ・ポガチャに0.09秒差で敗れて2位。第2・第5・第11ステージの敢闘もいずれも彼のもので、前へ出るのがこの選手の走り方でした。ところが、そこからの2週間は暑さとの戦いになります。第12ステージのカラル・アルでは「意識がもうろうとして、気持ちが悪くて、チームカーにつかまって水をもらい続けていた」。別の日には7人の集団でほぼ一日走り、制限時間には間に合わせました。「でも、あのときの7人の半分はもう家に帰っている。だから僕は、生き残っているんだと思う」。家に帰る、はレースを降りるという意味です。

そのヘイターは、2027年の所属先がまだ決まっていません。キャリアで初めてのことだと本人は言っています。

出典:'I was feeling delirious and hanging onto the car' – Still without a team for 2027, Ethan Hayter soldiers on — Cyclingnews

中間スプリントで、逃げを追っていた側が前へ出た

この日2つ目で最後の格付け山、3級プエルト・アルタフィで逃げが割れます。ヴァイトンプソアスパレレックネスの4人が先行し、そこからレックネスンがひとりで抜け出しました。

同じ坂で、集団からラムセス・デブライが飛び出します。残り3人になったアルペシンから、ゴグルに続く2人目です。彼は逃げの残りを追い抜き、下りでレックネスンに追いつきました。ただし集団との差は25秒しかありません。

そこへ、ヴィスマのワウト・ファンアールが来ました。ポイント賞の緑のジャージを着て、2日前の第13ステージを勝ったばかりの選手です。78.9km地点の中間スプリンで加速し、そのまま前へ。第9ステージで単独先行を見せた23歳のアレッサンドロ・ロメが続き、少し遅れて、シクロクロスの世界王者を父に持つティボー・ナイも合流します。残り30kmで、先頭は5人になりました。

ヴィスマはこの日ずっと集団の先頭を牽き、逃げを追い続けていたチームです。追う側が、自分から逃げる側に回った瞬間でした。

「みんなを驚かせようとしたんだ」とファンアールトは言います。「一日じゅう集団をコントロールしていたのに、うちの強い選手が何人も前に残って助けてくれた。でも、僕たちが攻めるほうを選ぶとは誰も思わないだろうと分かっていた。中間スプリントで、ここだという匂いを嗅ぎ取った。後ろにマシュー・ブレナがいたから、試すことに何のリスクもなかった。集団にはいつでもいい手が残っていたからね。ああいうのが、僕の好きなレースの仕方だ」

最後のところは、こういうことです。ファンアールトが前へ出ても、集団にはチームメイトのブレナン——この大会ですでに3勝しているスプリンタが残っている。もし先頭が捕まれば、今度はブレナンがゴールスプリントで勝ちにいける。どちらに転んでも勝つ手が残っているから、自分は思い切って出られた——という意味でした。

出典:Wout van Aert: "That was how I like to race" — La Vuelta 公式

3度の攻撃をひとりで潰し、コルドバを2戦2勝で去った

残り4km。5人は道幅いっぱいに広がって、互いの様子をうかがっていました。

先に動いたのはナイです。追う役はロメに回りましたが、ロメレはファンアールに任せました。結局、引き戻したのはファンアールトです。続いてレックネスが2度続けて仕掛け、その2度とも、追いついたのはやはりファンアールトでした。

なぜレックネスンが最後まで攻め続けたのか。ファンアールトはこう読んでいます。「レックネスンは、後ろにいた自分のチームメイトのために少し賭けたんだと思う。彼が仕掛けてくるのは予想していた」。1分ほど後ろには、ファンアールトたちを追って集団から飛び出した12人がいました。そこに、レックネスンと同じウノエックス・モビリティのトビアス・ヨハンネセがいました。仕掛けられた側は追わなければならず、そのたびに全員が脚を使います。5人が潰しあって速度が落ちれば、後ろの12人にも追いつく目が出てくる。レックネスンはそこに賭けたのでしょう。

残り1kmの看板の下で、ナイスが仕掛ける素振りだけを見せます。そして最後の直線、先に踏み出したのもナイスでした。ただし早すぎました。先頭でスプリントを始めた選手は、風を全部ひとりで受けます。長く受ければ、脚は先に終わります。その後輪に張り付いていたファンアールトが、最後の数mで前に出ました。ロメレがナイスをかわして2位。デブライとレックネスンは2秒差の4位と5位です。

この日の敢闘賞は、そのレックネスンに贈られています。朝の逃げに乗り、最後の格付け山をひとりで越え、下りで捕まったあとも攻め続けた——ゴールは5人のうち最後でしたが、この賞は順位ではなく、その日いちばん攻めた選手に贈られるものです。

コルドバはファンアールトにとって縁起のいい街になりました。ブエルタがこの街に来たのは3年で2度、彼はその2度とも勝っています。彼は笑ってこう言いました。「もうここには戻ってこないと思う。この記録を保てなくなるからね」。観光でなら来たい、とも付け加えています。

出典:'I'm not coming back, I can't maintain this statistic' — Cyclingnews

ゴールで、21歳が「僕らは何をしているんだ」と言った

ファンアールを祝福したあと、マシュー・ブレナは顔に水をかけながら、サイクルコンピュータを見下ろしました。

「もう二度とやりたくないね。でもこれ、平均41℃って出てる。平均だよ。序盤の上りでは44℃だった。そのあたりで、僕らは何をしているんだ、と考え始める」

「ふつうの会社員は室温を20℃かなにかに設定しているはずだし、UCIの事務所の人たちだって20℃に設定しているはずだ。その人たちのために僕らは外で汗を流している。よくはないけど、それでも走る。それが僕らの見せているショーだから。でも今夜、熱中症で救急車に乗って帰る人が何人か出ても驚かない」

ブレナンが名前を挙げたUCI(国際自転車競技連合)は、このスポーツのルールを決める団体です。

ブレナンはこのブエルタで3勝している21歳のスプリンターです。この日は集団に残り、先頭が捕まったときの切り札として最後まで待っていました。ファンアールトが思い切って前へ出られたのは、この選手が後ろにいたからです。翌日は休息日。「明日はいちばん得意なことをするよ。つまり何もしない。ベッドに寝転がって、寝て、それから作戦を考える」

この日、レースを去った選手はひとりもいませんでした。184人で始まったブエルタを、2週間走り切ったのは150人です。総合順位も動かず、は2位フェリックス・ガとの2分6秒差を保ったまま、残り6ステージへ向かいます。

出典:'It wouldn't surprise me if a few bodies left in an ambulance with heatstroke' — Cyclingnews

今日の寄り道

自転車をちょっと離れて、ステージが駆け抜けた土地の話。

文化暑さから逃げるためにつくられた中庭

コルドバの旧市街には、通りから細い玄関を抜けた先に中庭のある家が並びます。乾いて暑いこの土地で、まずローマ人が、のちにイスラーム時代の住人が、家を中庭のまわりに組み立てました。中央には噴水、多くの家には雨水をためる井戸。そして涼しさを感じさせるために、植物をたっぷり置きました。5月の12日間、住人は自慢の中庭を一般に開放して競い合います。1921年から続くこの祭りは、2012年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。

冷たいまま出てくるサルモレホ

トマトとパン、エクストラバージンオリーブオイル、ニンニクを混ぜてなめらかにし、冷やして出す——サルモレホはコルドバ生まれの料理です。上には角切りのイベリコ豚の生ハムとゆで卵。同じアンダルシアのガスパチョより濃く、スープというよりクリームに近い口当たりで、40℃を超える街で暮らす人たちが選んだ食べ方が、これでした。

写真: Wikimedia Commons(フリーライセンス)

この日の公式ハイライト

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この記事を書いた人

Grand Tour Hub 管理人

ロードレースの面白さを初心者目線で伝えるファンサイトの管理人。いちばん好きなのは、ゴール直前までもがいてスプリンターを発射させたアシストが、仲間の勝利を確信して、自分はまだゴールの手前なのにガッツポーズをする瞬間です。

※ 観戦記は管理人による独自の執筆コンテンツです。選手タイプの解説はタイプ図もどうぞ。