Beginner's Guide

自転車用語集

観戦中に出てくる33の用語をやさしく解説。言葉がわかると、実況も展開も何倍も面白くなります。

集団と走り方

プロトンpeloton(仏)

メイン集団のこと。空気抵抗を分け合うため、選手たちは大きな塊になって走ります。集団の中は先頭より3割前後も省エネと言われ、「いつ・誰が集団の前に出るか」に各チームの思惑が現れます。

使用例:「月曜朝の駅の通勤プロトンの中ほどで、私はさりげなく脚を温存した」

逃げ

グルペットgruppetto(伊)

山岳ステージで、スプリンターなど登りが苦手な選手たちが作る後方のグループ。「オートバス」とも呼ばれます。目的は優勝争いではなく制限時間内の完走。ライバル同士が助け合ってペースを刻む、独特の連帯が生まれる場所です。

使用例:「体育祭の長距離走では、完走だけが目標の仲間とグルペットを結成した」

スプリンター(タイプ図鑑)タイムリミット

逃げ/ブレイクアウェイbreakaway(英)

スタート後に少人数で集団から飛び出して先行すること。人数の多いプロトンの方が空気抵抗の面で有利なため、成功率は高くありません。それでもテレビ露出・各賞ポイント・大金星のチャンスを求めて、毎日誰かが飛び出します。

使用例:「定時5分前に会議室から逃げを打ったが、廊下で部長のプロトンに吸収された」

逃げスペシャリスト(タイプ図鑑)

アタックattack(英)

ライバルを引き離すための急加速。山頂前、ゴール前、石畳区間の入口など「どこで仕掛けるか」の駆け引きがレース最大の見どころです。

使用例:「タイムセール開始の合図とともに、母は誰よりも鋭いアタックを仕掛けた」

ドラフティングdrafting(英)

前の選手のすぐ後ろについて空気抵抗を減らすテクニック。時速40km超では出力の大半が空気抵抗との戦いになるため、ロードレースのほぼすべての戦術はこの物理法則の上に成り立っています。

使用例:「向かい風の通学路では兄の真後ろが定位置だった。あれが人生最初のドラフティングである」

トレインlead-out train(英)

ゴール前、チームが一列になって速度を上げ、最後尾のスプリンターを発射台のように送り出す隊列。列車のように見えることからこう呼ばれます。

リードアウト(タイプ図鑑)

エシュロンechelon(英)

強い横風のとき、風を避けるために選手が道路に斜めに並ぶ隊形。道幅に入りきれない選手は風をまともに受けて千切れてしまうため、平坦ステージでも一瞬で大きなタイム差が生まれる恐怖の展開です。

使用例:「ビル風の交差点で、通行人たちは無言のままエシュロンを組んで歩いた」

バッドデー/ジュール・サンjour sans(仏)

直訳は「何もない日」。しっかり調整してきたはずなのに、その日に限って脚がまったく回らない不調を指します。原因は疲労の蓄積や体調、暑さなどさまざまで、本人にも直前まで分からないことが多いのが厄介なところ。総合を狙うエースがバッドデーに当たれば一日で大きく順位を失いますし、山が苦手なスプリンターに当たれば、ただでさえ不利な山岳日に制限時間を越えられず、レースを去ることさえあります。

使用例:「万全で臨んだプレゼン当日に限って頭が回らない、あれはまさにジュール・サンだった」

グルペットタイムリミット

レースの種類

グランツールGrand Tours(英)

3週間・約21ステージで争う世界最大級のステージレース。ツール・ド・フランス(仏)、ジロ・デ・イタリア(伊)、ブエルタ・ア・エスパーニャ(西)の3つだけを指す特別な呼び名です。

グランツール図鑑

個人タイムトライアル(ITT)individual time trial(英)

1人ずつ順番に出走し、純粋にタイムだけを競う種目。ドラフティングが使えないため「真実の機械」とも呼ばれ、総合争いの大きな分岐点になります。

TTスペシャリスト(タイプ図鑑)

チームタイムトライアル(TTT)team time trial(英)

チーム全員が隊列を組んで走るタイムトライアル。先頭を短く交代しながら、8人がひとつのマシンのように噛み合ったチームが勝ちます。

世界選手権UCI Road World Championships(英)

年に一度、国の代表として走る一週間。ふだんは所属チームのジャージで戦う選手が、この週だけは母国のジャージを着ます。勝者は次の1年間、世界王者の証である虹のジャージをまとってレースに出ます。ワンデーのロードレース、個人タイムトライアル、そして男女混合のミックスリレーが行われます。

使用例:「社内対抗戦だけは、いつも言い争っている隣の席と同じチームになる。あれが世界選手権だ」

世界選手権図鑑アルカンシエルナショナルチーム

ナショナルチーム(代表チーム)

各国の連盟が世界選手権や五輪のために編成する代表チーム。ふだん走っているスポンサー名を冠した商業チームとは別物なので、同じチームの仲間が敵に、ライバルが味方に入れ替わります。出場できる人数は国ごとに違い、UCIの国別ランキングで決まります。

世界選手権図鑑プロチームのしくみ図鑑

ミックスリレーmixed team relay(英)

世界選手権のチームタイムトライアル種目。1か国6人(男子3人・女子3人)で組み、男女がそれぞれ1周ずつ走ってリレーし、2周の合計タイムで争います。2019年に始まった比較的新しい種目で、それまでの商業チームによるTTTに代わって置かれました。

チームタイムトライアル(TTT)世界選手権

コースと山

超級山岳/山岳カテゴリーhors catégorie(仏)

登りは難易度の低い順に4級→3級→2級→1級と格付けされ、それすら超える最難関が「超級(HC)」。カテゴリーが高い山ほど山岳賞ポイントが大きく、レースの勝負所になります。

クライマー(タイプ図鑑)

パヴェpavé(仏)

石畳の道。激しい振動、パンク、落車のリスクが常につきまとい、パリ〜ルーベのコースは「北の地獄」と呼ばれます。ツールでも石畳ステージは大波乱の名物です。

山頂フィニッシュsummit finish(英)

ゴールが登りの頂上に置かれたステージ。ドラフティングの効果が薄い登りでは実力差がそのままタイム差になるため、総合争いの決戦の舞台になります。

賞とジャージ

マイヨ・ジョーヌmaillot jaune(仏)

総合首位(ここまでの合計タイムが最少の選手)だけが着られる黄色いジャージ。1919年から続く、自転車競技で最も名誉あるシンボルです。最終日にこれを着てパリに凱旋するのが「総合優勝」です。ジロではピンク、ブエルタでは赤が同じ役割を担います。

ジャージ図鑑(ジロ・ブエルタとの比較)

マイヨ・ア・ポワmaillot à pois(仏)

山岳賞トップの、白地に赤い水玉のジャージ。カテゴリー付きの登りの頂上を上位で通過するとポイントが入ります。逃げやクライマーの大きな目標です。ジロは青一色、ブエルタは青い水玉と、レースごとに柄が違います。

ジャージ図鑑(ジロ・ブエルタとの比較)

マイヨ・ブランmaillot blanc(仏)

25歳以下の総合最上位選手が着る白いジャージ(ヤングライダー賞)。未来のマイヨ・ジョーヌ候補を探す楽しみでもあります。白は3大レース共通の「若手の証」です。

ジャージ図鑑(ジロ・ブエルタとの比較)

アルカンシエル(世界チャンピオンジャージ)maillot arc-en-ciel(仏: 虹のジャージ)

世界選手権のロードレースを制した「世界王者」が、次の1年間まとう白いジャージ。胸を横切る青・赤・黒・黄・緑の5本の帯は、五輪のシンボルと同じ5色です。タイトルを獲ったのと同じ種目でだけ着るのが決まりで、ロードで勝った選手はタイムトライアルには着ません。任期を終えても、襟や袖口の虹色の縁取りは生涯許されます。

アルカンシエル(ジャージ図鑑)世界選手権

コンビネゾン賞(複合賞)combiné(仏)

かつてのツールに存在した「総合・ポイント・山岳をまとめて強い選手」を称える賞。各賞ジャージの柄を継ぎ接ぎしたパッチワークデザインのジャージが与えられましたが、1989年を最後に廃止されました。当サイトでは、山岳賞とポイント賞の両方を集めた読者にだけ、画面の隅で走るドット絵の選手がこの幻のジャージを着て見せてくれます。

使用例:「仕事も家事も育児も回す私に必要なのは、コンビネゾン賞だと思う」

チーマ・コッピCima Coppi(伊)

ジロ・デ・イタリアで「その年のコースの最高標高地点」に与えられる称号。イタリアの英雄ファウスト・コッピにちなみ、最初に頂を越えた選手には特別なポイントと栄誉が贈られます。特定の峠の名前ではなく、年によって場所が変わるのがポイント——標高2,757mのステルヴィオ峠が務めることが最も多い「指定席」です。メディアによって「チマ・コッピ」「チーマコッピ」と表記が揺れますが、同じ言葉です。

使用例:「今年の社員旅行のチーマ・コッピは、行程3日目の早朝5時集合だった」

超級山岳/山岳カテゴリー

敢闘賞prix de la combativité(仏)

その日もっとも積極的に走った選手に贈られる賞。翌日は金色のゼッケンをつけて走ります(2022年までは赤でした)。長い逃げを打った選手が選ばれることが多く、「勝てなくても称えられる」ロードレースらしい賞です。

逃げ/ブレイクアウェイ

ボーナスタイムtime bonus(英)

ステージ上位入賞者(例: 1〜3位に10・6・4秒)に与えられるタイム短縮。総合争いは数秒差で動くため、総合勢がゴール前のスプリントに絡む理由になります。

中間スプリントintermediate sprint(英)

ステージの途中に設けられたポイント・ボーナスタイム獲得地点。ポイント賞を狙うスプリンターは、コース中盤でも一度全力を出します。

ルールと運営

タイムリミット/DNF・DNS・OTLtime limit(英)

各ステージには「勝者のタイムの◯%以内」という制限時間があり、間に合わないと失格(OTL)になります。DNFは途中棄権、DNSは出走取消。山岳ステージでグルペットが必死に走るのは、この制限があるためです。

使用例:「終電というタイムリミットに間に合わなかった彼は、タクシーというほうき車に回収された」

グルペットほうき車

VAM(平均登坂速度)velocità ascensionale media(伊)

1時間あたり何mの標高を稼いだかを表す登坂スピードの指標。タイムと標高差だけで計算できる客観的な数字で、プロの山岳での強さを比べる物差しとして使われます。トップ選手が長い峠を全力で登ると1,700〜1,900m/hに達します。

使用例:「駅の階段を2段飛ばしで駆け上がった。あの瞬間のVAMなら誰にも負けていない」

ほうき車voiture balai(仏)

レースの最後尾を走り、リタイアした選手を拾い上げる回収車。「落伍者を掃き集める」ことから1910年の導入以来この名で呼ばれ、いまも車体にほうきを飾ることがあります。この車のドアが開くのは、誰かの3週間が終わるとき——レースで最も切ない名脇役です。

使用例:「存在しないURLに迷い込んだ訪問者は、当サイトの404ページでほうき車が回収します」

タイムリミットグルペット

ニュートラルスタートneutral start(英)

スタート直後、先導車の後ろで隊列を整えたまま走る区間。ここではアタック禁止で、本当のレースは「キロメートル0」の旗が振られてから始まります。

ミュゼット/補給musette(仏)

補給食が入った肩掛け袋。コース途中のフィードゾーンで、スタッフから走りながら受け取ります。1日5,000kcal以上を消費するレースでは、食べることも重要な仕事です。日本では「サコッシュ」の名でも親しまれていますが、フランス語のsacocheは鞄全般を指す言葉で、競技の正式な呼び名はミュゼットです。

使用例:「遠足の朝に母が持たせてくれたおやつ入りリュックは、いま思えばミュゼットだった」

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