宇都宮ジャパンカップサイクルロードレース2026 ロードレース2026年10月19日文: Grand Tour Hub 管理人

秋晴れの宇都宮で2人きりの勝負、全米王者がゴール前の坂で競り勝った

宇都宮市森林公園 → 宇都宮市森林公園 144.2km(1周10.3kmの周回コースを14周します。周回に入るとすぐ古賀志林道の上りで、釣堀から頂上まで1.14km、平均勾配8.4%。山岳賞が懸かるのは3・6・9・12周目の頂上です。獲得標高は2,660m(同じコースで行われた2025年大会の主催者発表)。富士山の高さ(3,776m)の7割ほどを14回に分けて上る計算です)

宇都宮ジャパンカップは、ヨーロッパのシーズンを走り終えた海外のチームが10月に集まるレースです。その中には最上位のワールドチームもいます。スタートの前には、このレースで現役を終える日本の2人がホイールの花道で送り出されました。これ以上ない秋晴れの下、周回コースの上り坂を14回越えて最後に残ったのは、注目されていた全米王者のクイン・シモンズとアイルランドのベン・ヒーリーの2人でした。

14回並ぶ山が古賀志林道で、どの周回も頂上は周回の2km地点です。そこから5km地点まで下り、平らな道を抜けた後、最後の約3kmはアップダウンを繰り返しながらゴールへ戻ります。大会ガイドと同じ、主催者の高低差図から描いています

今日のデータ

スタート快晴 21.6℃・風2.2m/s
ゴール快晴 21.6℃・風2.2m/s
逃げ15人 → 捕獲
決着少人数の勝負(クイン・シモンズ)
完走48 / 109人

スタートの前、引退する2人がホイールの花道をくぐった

10時のスタートを前に、森林公園のスタートラインではホイールで作った花道が2人の選手を迎えました。この日のレースで現役を終える、TEAM UKYOの石橋学と愛三工業レーシングチームの岡本隼です。

石橋は青森県の出身で、2015年に22歳でジロ・デ・イタリアを走りました。日本人として6人目の出場です。岡本は京都府の出身。大学生だった2017年にアジア選手権のU23ロードレースで優勝しました。2023年のこのレースでは、雨の下りで集団が割れてできた追走集団に日本人でただ一人加わり、15位に入っています。

大会の幕開けに宇都宮の中心街で開かれたチームプレゼンテーションでも、2人はファンに別れの挨拶をしていました。岡本に花束を渡したのはキナンレーシングチームの草場啓吾。大学の後輩で、昨年までは愛三工業で岡本のチームメイトでした。岡本はチームプレゼンテーションでこの日のロードレースへの思いをこう話しています。「感謝を込めて全てを出し切って、有終の美を飾りたい」

9月のブエルタ・ア・エスパーニャの最終日にも、残る選手たちが自転車を立てて前輪を頭上に掲げ、引退する5人のために花道を作りました。グランツールの最後の1日でも、宇都宮の秋の1日でも、選手たちは花道で仲間を見送ります。

出典(2件)

初出場&初優勝 レースを作ったシモンズのジャパンカップ制覇(「引退する石橋学(チーム右京)と岡本隼(愛三工業レーシング)を花道で迎えてからスタート」「ホイールの花道で迎える」)— cyclowired ↗2026宇都宮ジャパンカップが開幕!オリオンスクエアに集結したチームプレゼンテーション【国内チーム編】(「今シーズン限りで引退する石橋学がファンに挨拶し」「エーススプリンターの岡本隼は日曜日のロードレースがラストレース」「感謝を込めて全てを出し切って、有終の美を飾りたい」「昨年までのチームメイトで日本大学の後輩でもある草場啓吾(キナンレーシングチーム)から花束が贈られ」)— 宇都宮ジャパンカップ公式 ↗

1周目の上りでリドル・トレックが仕掛け、全日本王者を含む15人が逃げた

スタートしてすぐの古賀志林道で最初にペースを上げたのはリドル・トレックで、シモンズ自身が上りの麓から踏み込みました。

下りの後、チューダー・プロサイクリングのファビアン・ヴァイスが一人で飛び出し、追いついた選手たちと合わせて先頭は15人になりました。その中には日本チャンピオンのジャージを着た愛三工業レーシングチームの留目夕陽と、チームメイトの織田聖がいます。キナンレーシングチームの山本元喜と、TEAM UKYOのイタリア人ニコロ・ガリッボもいます。逃げが決まると集団は落ち着き、レースの中盤までは2分前後の差のまま周回が進みました。

留目はこの年6月の全日本選手権で日本王者になった選手です。そのときは最終周の上りでベテランの新城幸也に追いつき、独走で勝ちました。チームプレゼンテーションでは、マレーシアのツール・ド・ランカウイから調子がいいと話していました。山岳賞は3・6・9・12周目の頂上を先頭で越えた選手に贈られ、3周目を山本が、6周目を留目が取りました。

出典(4件)

初出場&初優勝 レースを作ったシモンズのジャパンカップ制覇(「1周目、スタート直後の古賀志林道で仕掛けたのはリドル・トレックだった。」「クィン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)が麓区間から踏みを入れ」「先頭は15名」「レース中盤戦までは逃げ15名とメイン集団が2分前後の差でレース距離を消化していった。」)— cyclowired ↗Communiqué No.5 ロードレース リザルト(山岳賞 3周目 YAMAMOTO Genki、6周目 TODOME Yuhi)— 宇都宮ジャパンカップ公式 ↗日本チャンピオン留目が逃げて、最後はヒーリーvsシモンズ!(「この留目の逃げグループは10名強ほどでその中には日本人選手として織田聖も入っていた。」)— Bike News Mag ↗2026宇都宮ジャパンカップが開幕!オリオンスクエアに集結したチームプレゼンテーション【国内チーム編】(留目「先日のランカウイから調子がいい」)— 宇都宮ジャパンカップ公式 ↗

残り6周でシモンズが自ら集団を絞り、残り3周の上りでヒーリーと2人になった

レースの中盤、集団の先頭を引いたのはロット・アンテルマルシェとリドル・トレックでした。リドル・トレックは出場を予定していた2人が来られず、4人での出走です。

残り6周の古賀志林道で、全米王者のジャージを着たクイン・シモンズが自分で前に出てペースを上げます。すぐ後ろに付いたのはEFエデュケーション・イージーポストのベン・ヒーリー。2025年のツール・ド・フランスで黄色いマイヨ・ジョーヌを着たアイルランド人です。3週間前の世界選手権で2位だったマイケル・マシューズはここで遅れました。

シモンズたちの集団はやがて逃げに追いつき、残り4周の上りで2人がもう一段ペースを上げます。残り3周の上りでシモンズが更に踏み込みました。付いていけたのはヒーリーだけです。この周回の山岳賞はシモンズが取りました。

後ろにはトタルエナジーズのジョルダン・ジェガット、ロット・アンテルマルシェのイェノ・ベルクムース、バーレーン・ヴィクトリアスのアントニオ・ティベリたちの追走ができます。そこにはシモンズのチームメイト、ジュリアン・ベルナールもいました。追走の選手たちは順番に先頭を代わって風を分け合いますが、ベルナールがその交代を乱し、追走のペースは上がりません。残り2周で、前の2人と追走の差はおよそ50秒に開いていました。

出典(3件)

初出場&初優勝 レースを作ったシモンズのジャパンカップ制覇(「残り6周回でシモンズが自らペースアップして集団を絞り」「ラスト4周目の古賀志林道ではシモンズとヒーリーがもう一段ペースを上げ」「残り3周目の古賀志林道でシモンズが猛烈なペースアップを行い、追従したヒーリーと一緒に抜け出した。」「シモンズのアシスト役を務めたベルナールがローテーションを阻んだ」)— cyclowired ↗マシューズ、ヒーリー、シモンズが登場 新城も集結したチームプレゼンテーション【海外チーム編】(リドル・トレックはヴァチェクとゲイガン・ハートが欠場し4名で参戦、マシューズは世界選手権2位)— 宇都宮ジャパンカップ公式 ↗日本チャンピオン留目が逃げて、最後はヒーリーvsシモンズ!(残り2周で先頭2名と追走7名の差は約50秒)— Bike News Mag ↗

最終周の古賀志林道でもヒーリーはシモンズを離せず、ゴール前の僅かな坂で勝負が決まった

ゴール前で一騎打ちになると分かっている2人逃げでは、スプリントに自信のある側は相手に付いていけばよく、自信のない側はどこかで振り切るしかありません。シモンズはレースの後、こう話しています。「スタートラインにベンがいるのを見たとき、この中で一番強いのは僕ら2人だと、みんな分かっていたと思う」「スプリントには結構自信があったから、最後の周回であの上りを越えればいいと分かっていた」

最終周の古賀志林道でヒーリーが仕掛けます。続く下りでも攻めました。それでもシモンズは離れません。ゴールへ戻るアップダウンでは2人が互いの出方をうかがい、ヒーリーが前のまま残り300mに入ります。ホームストレートの手前の僅かな坂でシモンズが踏み込むと、ヒーリーには応える脚が残っていませんでした。ゴールでの差は僅かでした。同じ集団でゴールした選手には同じタイムが付く決まりがあり、ヒーリーはシモンズと同タイムの2位として記録されています。

ヒーリーはレースの後、ゴールまでにシモンズを振り落とさなければならないと分かっていたと話しました。最後の下りでも攻めたものの、振り切れなかったそうです。シモンズはこの勝利で今シーズンを締めくくりました。

※ 公式アカウントが公開しているコンテンツの埋め込みです。映像の権利は各権利者に帰属します。

初心者向けメモ: ジャパンカップは世界の格付けで上から2つ目の段にある

ロードレースにはUCI(国際自転車競技連合)が決める格付けがあります。一番上の段がUCIワールドツアーで、ツール・ド・フランスやイル・ロンバルディアはここに入ります。その次の段が2020年に始まったUCIプロシリーズです。ジャパンカップはこのプロシリーズのレースです。

この日の出走は19チーム。そのうち5チームが普段ワールドツアーを走るUCIワールドチームでした。シモンズのリドル・トレックも、ヒーリーのEFエデュケーション・イージーポストもそうです。7月のツールを走った選手たちと日本のチームの選手たちが、同じ森林公園の周回で同じレースを走る。それが宇都宮の10月に起きていることです。

出典(5件)

Quinn Simmons beats Ben Healy to Japan Cup victory(「When you take the start and Ben is here, I think everyone knew we were the two strongest in the race」「I was quite confident in my sprint, so I just knew I had to make it over the climb the last time.」)— Canadian Cycling Magazine ↗初出場&初優勝 レースを作ったシモンズのジャパンカップ制覇(「最後はヒーリー先行で残り300m」「ホームストレートに入る前の僅かな登り区間でシモンズが踏み込むと、ヒーリーには為す術なし。」、ヒーリー「フィニッシュまでにクィンを振り落とさないといけないとは分かっていた」「ラストのダウンヒルでも攻めたけど無理だった」、シモンズ「シーズンを勝利で締めくくることができて本当に嬉しいよ」)— cyclowired ↗宇都宮ジャパンカップ公式 ロードレース(「宇都宮ジャパンカップロードレース(UCIプロシリーズ)」「19チーム:UCIワールドチーム(5チーム)」) ↗UCI ProSeries — Wikipedia(「The UCI ProSeries is the second tier men's elite road cycling tour.」「It was inaugurated in 2020.」) ↗UCI競技規則 第2部 ロードレース 2.3.040("All riders in a given bunch shall be credited with the same time when they cross the finishing line.")— UCI(2025年4月1日版。パンアメリカン自転車連盟(COPACI)のサイトに掲載された写し) ↗

走り出した109人のうち完走は48人、その最後にゴールしたのが岡本隼だった

1分12秒遅れの3位争いはスプリントになり、ロット・アンテルマルシェのベルクムースが取りました。朝から逃げていたTEAM UKYOのガリッボも5位に残っています。日本人で一番上位だったのは、6周目の山岳賞を取った留目夕陽の21位。アジアの選手の最上位に贈られるアジア最優秀選手賞を受けました。

石橋学は残り3周で手を振りながらレースを終えました。完走はせず、そこが現役最後の走りになりました。

ゴールまでたどり着いたのは、走り出した109人のうち48人で、半分にも届きません。ロードレースにはゴールの制限時間があります。UCIの規則では、勝者より8%を超えて遅れてゴールした選手には順位が付きません。規則通りなら、この日の制限時間はシモンズの3時間33分2秒の8%で、およそ17分です。先頭は平均すると1周を15分余りで回っていたので、1周と少し遅れればもう間に合いません。公式リザルトで、制限時間を過ぎてゴールした選手は0人でした。残りの61人はゴールまで走らずにレースを降りています。

シモンズの平均時速は40.6kmでした。61人にはそれぞれの理由があります。それでも、この速さで14回目の古賀志林道を越え、最後まで残れたのは48人だけでした。

その48人の最後にいたのが、シモンズから13分21秒遅れでゴールした岡本隼です。規則の8%の線まで残りは4分足らずでした。花道をくぐって走り出した最後のレースを、岡本はゴールラインまで走り切って終えました。

出典(3件)

Communiqué No.5 ロードレース リザルト("Average speed of winner: 40.6km/h"、"Riders finishing after deadline: 0"、出走109、完走48、48位 OKAMOTO Hayato +13'21"、21位 TODOME Yuhi、アジア最優秀選手賞 TODOME Yuhi、DNF ISHIBASHI Manabu)— 宇都宮ジャパンカップ公式 ↗日本チャンピオン留目が逃げて、最後はヒーリーvsシモンズ!(「このジャパンカップが現役最後となる石橋学(Team Ukyo)がこのように手を振りながら残り3周でレースを終える。」)— Bike News Mag ↗UCI競技規則 第2部 ロードレース 2.3.039("Any rider finishing in a time exceeding that of the winner by more than 8% shall not be placed.")— UCI(2025年4月1日版。パンアメリカン自転車連盟(COPACI)のサイトに掲載された写し) ↗

※ 本文中の埋め込みは公式アカウントが公開しているコンテンツです。映像の権利は各権利者に帰属します。

今日の寄り道

自転車をちょっと離れて、ステージが駆け抜けた土地の話。

石の文化大谷石と大谷寺

宇都宮市の北西部、大谷町の辺りで切り出される軽石凝灰岩が大谷石です。柔らかく加工しやすい石で、1922年にはフランク・ロイド・ライトが設計した帝国ホテルにも使われました。採石場の跡の地下空間は大谷資料館として公開されています。近くの大谷寺には岩壁に彫られた磨崖仏があり、国の特別史跡と重要文化財に指定されています。ジャパンカップを描いたアニメ『茄子 スーツケースの渡り鳥』に出てくる大谷磨崖仏と大谷平和観音は、この一帯にあります。

食文化宇都宮の餃子

宇都宮に餃子が広まったきっかけは、市内に駐屯していた陸軍の第14師団が中国に出兵して餃子を知り、帰郷した人たちが広めたことだとされています。1993年には市内の専門店など38店舗で宇都宮餃子会が発足し、2023年5月の時点で加盟店は145店に上ります。

写真: Wikimedia Commons(フリーライセンス)

管理人のひとこと

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ジャパンカップを舞台にしたアニメがあります。2003年の映画『茄子 アンダルシアの夏』の続編として2007年に発売された『茄子 スーツケースの渡り鳥』です。監督は高坂希太郎、原作は黒田硫黄の漫画『茄子』。前作はブエルタ・ア・エスパーニャの1日を描いていました。

古賀志林道の上りや表彰式の裏の選手控えのテントは、作品で見たことのある景色でうれしくなりました。

  • 茄子 スーツケースの渡り鳥

    高坂希太郎 監督/アニメ(2007年)

    PRAmazonで探す ↗

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この記事を書いた人

Grand Tour Hub 管理人

ロードレースの面白さを初心者目線で伝えるファンサイトの管理人。いちばん好きなのは、ゴール直前までもがいてスプリンターを発射させたアシストが、仲間の勝利を確信して、自分はまだゴールの手前なのにガッツポーズをする瞬間です。

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※ 観戦記は管理人による独自の執筆コンテンツです。クライマー、スプリンターといった役割の違いなら選手タイプへ。