ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 Stage 162026年9月9日文: Grand Tour Hub 管理人

ポイント賞のジャージがボトルを運び、21歳のチームメイトを勝たせた

コルテガナ → ラ・ラビダ(パロス・デ・ラ・フロンテラ)181.1km(丘陵/獲得標高1,980m・J SPORTS調べ。格付けのついた山はひとつもなく、上りは前半に集中しています。中間スプリントは114.5km地点のビリャラサで、そこから先はほぼ平坦。ゴール前は残り1.1kmと残り500mにラウンドアバウトがひとつずつ置かれています)

格付けのついた山がひとつもない、平坦寄りの一日でした。それでも走っているあいだに気温は36℃まで上がり、あるチームはここまでに8人のうち2人を失い、残る6人で朝から集団の先頭を引いていました。 そのチームで、チームカーまで下がって背中に5本のボトルを差し、集団の前まで運び直していたのは、ポイント賞の緑のジャージを着た選手でした。

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シエラ・デ・アラセナの山あいのコルテガナから下って始まり、前半は細かなアップダウンが続きます。63.1km地点のミナス・デ・リオティントを過ぎると標高は落ちていき、114.5km地点の中間スプリント以降は、ほぼ平坦のまま海へ出ます 中間スプリント ビリャラサ(残り66.6km地点)
スタート快晴 32.9℃・風6.1m/s
ゴール快晴 37.3℃・風4.3m/s
逃げ5人 → 捕獲(残り23km)
決着集団スプリント(マシュー・ブレナン)
総合エンリク・マスが首位堅持(+126秒)
完走149 / 150人
敢闘賞ケヴィン・ヴェルマーク(#17・UAE Team Emirates XRG)

朝の逃げは5人で、それを一日じゅう追ったのは6人になったチームだった

コルテガナはシエラ・デ・アラセナの山あいにある村で、コースはそこから下って始まりました。上りはほとんどが前半に詰まっていて、走り出して5kmで細かなアップダウンに入ると、すぐにアタックが始まります。

最初に8人が飛び出しましたが、これは吸収されました。続いて出た5人が、そのまま一日の逃げになります。ケヴィン・ヴェルマーク、ヴァランタン・マドゥアス、シモン・ダルビー、ヤシャ・ズッタリン、ローランド・テールマン。差はいちばん開いたところで2分40秒ほどでした。

その後ろで集団の先頭を引き続けたのは、ヴィスマ・リースアバイクです。第14ステージまでにベン・トゥレットとクリストフ・ラポルトを失い、この日は6人。それでも差を2分台に抑え込み、残り100kmを切ってからは1分半まで詰めていきました。

ポイント賞の緑のジャージを着るワウト・ファンアールトは、レースのあとでチームメイトふたりの名前を挙げました。「今日は本当に、僕らが全部をコントロールしなければならなかった。ほかのチームの助けを当てにできるまで、ずいぶん長くかかった。ステフェンとヨルゲンの先頭での仕事は、本当に称えないといけない。ふたりは逃げにまったくチャンスを与えなかった」——ステフェン・クライスヴァイクは39歳で、このブエルタが現役最後のグランツール。ヨルゲン・ノードハーゲンは、これが初めてのグランツールです。第11ステージでも、このふたりが並んで集団の先頭を引いていました。

集団の中から見ていた山岳賞のサンティアゴ・ブイトラゴも、同じことを言いました。「今日は前半がきつかった。ヴィスマがきついペースを作ったから」。前で走り続けたヴェルマークはこの日の敢闘賞に選ばれ、第14ステージに続くこのブエルタ2度目になりました。

出典(3件)

Wout van Aert schittert nu weer als aangever(クライスヴァイクとノードハーゲンの先頭での仕事について。オランダ語)— WielerFlits ↗Santiago Buitrago: 「We enjoyed it」(休息日明けの前半について)— ブエルタ公式のコメントページ ↗As it happened: Crosswinds fail to materialise as the sprinters take stage 16(分刻みのログ。逃げの構成、差の推移、気温、落車、発射)— Cyclingnews ↗

気温36℃、6人になったチームのボトルを、緑のジャージが背負って運んだ

63.1km地点のミナス・デ・リオティントを過ぎると、道は下り基調になります。気温は34℃、35℃と上がり、114.5km地点の中間スプリントを過ぎたころ、レース現場の計測は36℃を示しています。

ボトルは集団の中にはありません。積んでいるのは後ろを走るチームカーで、何本も要る日は、誰かが最後尾まで下がって受け取り、風の中を追い上げて仲間に配ることになります。この日ヴィスマでその仕事をしていたのが、ポイント賞の緑のジャージを着たファンアールトでした。

レースのあと、ベルギーの公共放送スポルザに聞かれて、本人はこう答えています。「当たり前のことだと思う。今日だけでも、何百回も起きているはずだ」

「それを僕より何百回も多くやっている選手がたくさんいるけれど、その人たちは映らない。目立って見えるのは分かるよ。でも極端な条件だし、先頭を引いている選手を十分に冷やすことがものすごく大事なんだ」

そして人数の話をしました。「うちはもう6人しかいないから、誰かを送り出す余裕がない。5本のボトルが僕の背中にあるのと、セップ・クスの背中にあるのとでは、大きな違いがある」——クスは2023年のブエルタの覇者で、この日を終えて総合10位。チームで総合を追っているのは、この人のほうです。

最後は、運ぶ本数の話でした。人数が少なければ、運ぶボトルも少ない——いたずらっぽく片目をつぶって、こう付け加えています。「6人しかいないのは得でもあるよ。チームメイトが5人しかいないんだから」

初心者向けメモ: ボトルは、集団の後ろから運ばれてくる

補給食は決められた区間(フィードゾーン)でスタッフから受け取れますが、ボトルはそれだけでは足りません。暑い日は何度も補充することになります。積んでいるのは後ろのチームカーで、集団のうしろに各チーム2台まで、審判車の後ろに並んで走っています。

つまり誰かが集団の最後尾まで下がり、受け取り、ジャージの背中に差して、風の中を先頭付近まで追い上げ直さなければなりません。下がるのは楽でも、戻るのは重い。ドメスティークの古くからの仕事です。

ふつうは、その日いちばん余力のある選手が引き受けます。人数が減ったチームでは、その役が回ってくるのが速くなります。

出典(2件)

「Ik vind dat evident」「5 bidons op mijn rug of voor Sepp Kuss is een groot verschil」(ボトル運びについての発言。オランダ語の原文)— ベルギーの公共放送スポルザ ↗As it happened: Crosswinds fail to materialise as the sprinters take stage 16(分刻みのログ。逃げの構成、差の推移、気温、落車、発射)— Cyclingnews ↗

レースを降りたのはひとりだけ——スプリンターを送り出す側の選手だった

その仕事は映らない、とファンアールトが言ったその日に、映らないままレースを去った選手がひとりいました。

この日スタートしたのは150人で、ゴールしたのは149人でした。降りたのはティモ・ローセン、33歳。残り100kmを過ぎたところで自転車を降り、チームカーに乗り込みました。第2週の落車から、休息日だけでは回復しきれなかったと報じられています。

ピクニック・ポストNLはこれで4人目の離脱で、8人で始めたチームは半分になりました。ローセンの総合順位は前日まで下から2番目で、首位から4時間23分遅れ。ここまでの2週間で、この人が逃げに乗った日は一度だけです。第3ステージ、フォン・ロムーへ向かう逃げに乗りました——雹と雷雨で中止になった、あの日です。

2024年にこのチームへ移ってから、ローセンはスプリントの列車で働く役回りに軸を移しました。チームの選手紹介ページで、本人はこう話しています。「うまくいかない日はあります。トップの結果だけを見ていたら、いい日より悪い日のほうが多いこともある。だから一日ごとに学んで、次はよくなることが大事なんです」

出典(3件)

Matthew Brennan makes it four with another scorching sprint to win stage 16(ローセンの離脱理由、コルトの復帰)— Cyclingnews ↗Picnic PostNL nog maar met vier renners in koers na opgave Timo Roosen(4人目の離脱、総合順位、第3ステージの逃げ。オランダ語)— WielerFlits ↗Timo Roosen(「うまくいかない日はあります」の原文。英語)— チーム・ピクニック・ポストNL公式 ↗

残り500mの左コーナーを抜けたところで、緑のジャージが先頭に出た

この日の見どころのひとつは、海から吹く横風でした。残り23kmからは追い風ぎみの横風、残り12kmからは向かい風ぎみの横風——コースはそういう向きに作られていて、集団はその手前から位置を上げ始めます。

けれど風は集団を割りませんでした。道は風からよく守られていて、リオティント川の河口沿いに出ても、隊列が伸びるだけで終わります。パロス・デ・ラ・フロンテラの狭い街路では落車があり、イヴォ・オリヴェイラとトビアス・ヨハンネセンが倒れました。ふたりとも自転車に戻りました。転ばずに足止めを食ったマグナス・コルトは、集団の前まで戻って、最後は5位でゴールしています。そのすぐあと、逃げの5人が捕まりました。残り23km、まだ街の中です。

ファンアールトは、チームのスプリンターであるマシュー・ブレナンをどう運んだのかを、こう説明しています。「今日は一日じゅう、マシューをいい位置に置こうとしていた。風の通る開けた区間がいくつかあって、総合を狙うチームが何か仕掛けてくると考えられたからだ。実際、最後にレッドブル・ボーラ・ハンスグローエがそうした。だから彼は、ずっと僕のポケットの中にいた」

「残り1kmのラウンドアバウトに向けて、いい位置を取ろうとした。そこまではチームからたくさん助けをもらった。そして、マシューと一緒に前へ出るのは最後の直線に入ってから、という計画だった。必要になったときに自分のスプリントを始められるよう、空いている場所を探していたんだ」

そのラウンドアバウトを回り、残り500mで左に折れてラ・ラビダへ。そのコーナーを抜けたところでファンアールトが先頭に出て、残り125mまで引き切ります。そこから前に出たブレナンに、誰も並べません。2位はブライアン・コカール、3位はフィト・ブラーツ。ファンアールトはそこで力を抜かず、6位でゴールしています。

初心者向けメモ: リードアウトを終えた選手が、そのままスプリントを続ける理由

ポイント賞は、ゴールの着順に応じて点が入ります。この日のように丘陵と格付けされたステージでは1位30点、2位25点、3位22点……と15位の2点まで刻まれ、中間スプリントには別の配点があって、この日は1位が20点でした。

だから発射台の役を終えた選手も、そこで力を抜かずに走り切れば点が入ります。この日の緑のジャージは、チームメイトを送り出したあと6位でゴールし、15点を足しました。仲間を勝たせる仕事と、自分のジャージを守る仕事は、最後の数百mだけ同じ方向を向いています。

出典(3件)

Wout van Aert: 「Basically, Matthew was always in my pocket」(一日の組み立ての説明。英語の原文)— ブエルタ公式のコメントページ ↗As it happened: Crosswinds fail to materialise as the sprinters take stage 16(分刻みのログ。逃げの構成、差の推移、気温、落車、発射)— Cyclingnews ↗Matthew Brennan makes it four with another scorching sprint to win stage 16(ローセンの離脱理由、コルトの復帰)— Cyclingnews ↗

4勝目の21歳が、9月27日の虹のジャージの話をした

グランツール初出場のブレナンは、これで4勝目です。ファンアールトの2勝と合わせて、チームはこのブエルタで6勝。第3ステージが中止になったので、実際に走られたのは15ステージで、そのうちの6日をこのチームが取ったことになります。あと1勝すれば7つです。ファンアールトは「7勝はめったに起きないことだ。6つでも十分に誇らしい。でも、いまの脚とチームの空気があるから、まだ狙う」と話しています。

ポイント賞の順位は、ファンアールトが282点でブレナンが189点。この日ゴール前で発射台をつとめた選手が、送り出した選手を93点引き離して緑のジャージを着ています。

ブレナンは会見で、2023年のブエルタを勝ったセップ・クスが自分のために先頭を引いていたことにも触れました。そのうえで、ひとつだけ自分以外の話をしています。9月27日、カナダのモントリオールで世界選手権のロードレースがあります。勝った選手は1年のあいだアルカンシエル——虹のジャージを着ます。ブレナンはこのレースに出ません(「昨日、休暇を予約したから」)。優勝候補のひとりに数えられているのは、この日の発射台——ファンアールトのほうです。

ブレナンはイギリス人で、ファンアールトはベルギー人です。だから、母国の仲間はその日ファンアールトの相手になります。

「これは利害がぶつかるんだ。母国の仲間に活躍してほしいからね。でも、もし彼が勝ったら、自分がどれだけ嬉しいか言葉にできないと思う」

話はそこから、今年4月のパリ〜ルーベへ移ります。ファンアールトが初めてそのレースを勝った日です。

「彼が戻ってくるまでにかかった年月を思うんだ。怪我と、何度も打ちのめされたことを。ルーベは特別だったし、その場に加われたのは本当にすごいことだった。それで彼が世界選手権で虹のジャージをまとうことになったら、これ以上のものはないよ」

出典(4件)

Brennan: 「We can replicate what we do here at the Tour」(4勝目の会見。英語の原文)— ブエルタ公式のコメントページ ↗「He is close to 2022」(会見での「利害がぶつかる」の発言と、世界選手権に向けたファンアールトの状態)— Cyclingnews ↗「This is a big stepping stone」(世界選手権に出ない理由と2027年ツールへの希望)— Cyclingnews ↗第16ステージ終了時点の各賞順位(ポイント賞282点対189点、総合)— ブエルタ公式 ↗

今日の寄り道

自転車をちょっと離れて、ステージが駆け抜けた土地の話。

科学赤い川と、火星に似た水

63.1km地点で通ったミナス・デ・リオティントは、古代から掘られてきた鉱山の町です。そばを流れるリオティント川はpH1.7〜2.7という強い酸性で、鉄を中心に銅・カドミウム・マンガンといった金属が溶け込み、水そのものが赤く見えます。そこに棲んでいるのは鉱物だけを食べて生きる微生物で、NASAはこの川を、火星の環境に似ているかもしれない場所として研究の対象に選びました。およそ100kmを流れてウエルバの河口に出るこの川の、その河口の脇が、この日のゴールです。

文学ロバのプラテーロが歩いた町

147.2km地点のモゲールは、詩人フアン・ラモン・ヒメネスが1881年に生まれた町です。彼は銀色の毛並みのロバ、プラテーロに語りかけながらこの町を歩く日々を散文詩に書き、1914年に『プラテーロとわたし』として出しました。138編がそろった完全版は1917年です。1956年には、その詩業全体に対してノーベル文学賞が贈られました。いまも町には、詩人と妻ゼノビアの名を冠した記念館があります。

写真: Wikimedia Commons(フリーライセンス)

この日の公式ハイライト

第16ステージ フィニッシュシーン(J SPORTS公式。約4分20秒)
第16ステージ ハイライト(Velon公式。約4分50秒)
第16ステージ 拡張ハイライト(ラ・ブエルタ公式。約7分) ↗第16ステージ ラスト1km(ラ・ブエルタ公式。約1分15秒) ↗

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この記事を書いた人

Grand Tour Hub 管理人

ロードレースの面白さを初心者目線で伝えるファンサイトの管理人。いちばん好きなのは、ゴール直前までもがいてスプリンターを発射させたアシストが、仲間の勝利を確信して、自分はまだゴールの手前なのにガッツポーズをする瞬間です。

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※ 観戦記は管理人による独自の執筆コンテンツです。クライマー、スプリンターといった役割の違いなら選手タイプへ。