ブエルタ・ア・エスパーニャ2026 休息日2026年9月8日文: Grand Tour Hub 管理人

セビリアの休息日——赤いジャージが初めての男と、4度の覇者

第2休息日 — アンダルシア州セビリア周辺(翌日は第16ステージ: コルテガナ → ラ・ラビダ 181.1km)

3週間のブエルタに2日だけ置かれた休息日の、2日目です。プロトンはコルドバから西へ移り、セビリアとその周辺に散らばりました。ここから残り6ステージ。木曜日には32.1kmの個人タイムトライアルがあり、金曜と土曜の山を越えて、日曜にグラナダへ着きます。今年の開幕地はスペインではなくモナコで、8月22日に走り出したのは184人。第2週を終えて残っているのは150人です。1チーム8人で始まるこのレースで、8人全員が残っているチームが5つ、3人になったチームが1つあります。レースのない月曜日は、軽く回して、体を診てもらって、記者の前に座る日——最終週の準備日です。この日のセビリアで、5つのチームがそれぞれの最終週の話をしました。赤いジャージを生まれて初めて着た男、それを2分10秒差で追う4度の覇者、白いジャージを守る男、2日前にチーム史上初の勝利を挙げたチーム、そして初めての3週間を走っている20歳です。

赤いジャージを着るのは、31歳にして初めてだった

セビリアで記者の前に座ったのは、モビスターの赤いジャージ、エンリク・マでした。1週間のうちに2度、総合首位として会見に出たことになります。第1休息日の会で、残りのコースを「まったく見当もつかない」と笑っていた31歳です。

彼は自分の立場をこう説明しました。「レースでリーダーのジャージを着たのは、これが初めてなんだ。だからとても特別な感覚だよ」。2018年から2024年にかけてブエルタの表彰台に4度立ちながら、どのレースでも、一日たりとも首位のジャージを着たことがなかった。「ステージのあとには、こなさなければならない手続きがいくつもある。それも一度もやったことがなかった。赤いジャージを着るのは、気に入っているよ」

木曜日の32.1kmの個人タイムトライアルは、3週間ずっと彼の弱点として語られてきました。本人の答えはこうです。「山は僕に有利だ。ここまで毎日そこで時間を稼いできたんだから。だからタイムトライアルを怖がる必要はない。21日のレースで、タイムトライアルは1日。残りの19日は僕に有利に働いてきた」——このブエルタのタイムトライアルは2日で、もう1日が開幕地モナコです。だから「残り19日」。

いちばん警戒しているのは、ログリッでした。「彼はほんの2年前にブエルタを勝っている。いまは3位だ……切り捨てることはできないし、いい状態にあることを見せている。しかも、ブエルタの勝ち方を正確に知っている。4回勝っているんだから」

チームについては、こう言いました。「ここまでの走りに、うちのチームは10点満点だ。ずっと全部を掌握してくれていた」。最終週の方針も明かしました。「アルハンブラには、いまと同じ位置で着かなければならない。もともとは逃げに乗ってステージを狙うつもりだったけれど、いまはできるかぎりコントロールすること、それが全部だ」——アルハンブラは、最終日のゴールになるグラナダの宮殿です。

会見には、かつてのチームメイトで、いまスペイン代表の監督を務めるアレハンドロ・バルベルデが来ていました。その数時間後、同じセビリアで発表された世界選手権の代表に、マスの名前が入っています。

出典:Enric Mas: 「Es el momento más feliz de mi vida」(休息日会見のスペイン語原文。リーダージャージが初めてであること、ステージ後の手続きの話)— Infobae/EFE配信I dont need to be scared of the time trial(休息日会見。タイムトライアル、ログリッチ評、「10点満点」、アルハンブラ。英語)— CyclingnewsEnric Mas, Juan Ayuso y Paula Blasi liderarán las selecciones en el mundial de Montreal(同じ日にセビリアで発表された世界選手権代表。スペイン語)— Infobae/EFE配信

4度の覇者は、2分10秒差で最終週の入口に着いた

マスがいちばん警戒している相手は、この日、総合3位にいました。レッドブル・ボーラ・ハンスグローエのプリモシュ・ログリッ、36歳。ブエルタを4回勝っている選手です。

ここまでの3週間は、本人の計画どおりではありませんでした。7月の終わり、チームのホテルの前で車にはねられています。スポーツディレクターのパチ・ビラの説明はこうです。「ログリッチは完璧な準備ができなかった。5週間止まっていたし、僕らにとっては未知数のまま来た。いまは悪くない、思っていたよりいい」

もうひとりのスポーツディレクター、スヴェン・ファントゥーレンハウトは、その少し前にベルギーのメディアにこう話していました。「第2休息日に同じ状況でいられるなら、いますぐサインする。マスとの差が、いまよりさらに1分30秒開いていてもいい。そのうえで、最終週に僕らが仕掛ける」

その第2休息日が来ました。第1休息日にログリッチはマスの1分18秒後ろで総合2位。いまは2分10秒後ろの3位です。あいだの2位には、2分6秒差でフェリックス・ガがいます。ログリッチの差が開いたのは52秒で、監督が許容すると言った1分30秒よりは小さい。ただし順位はひとつ下がりました。

問題は、その2分10秒をどこで取り返すか。ビラは2つの日を挙げました。木曜のヘレスのタイムトライアルと、土曜のコリャド・デル・アルグアシルです。「タイムトライアルがログリッチに向いているのは確かだ。でも、38分ほど続く全開の走りの中で彼がどうなるかは、見てみないと分からない。このタイムトライアルとグラナダのステージは、両方をうまくやらなければいけない。片方だけうまくやっても足りない。ふたつは補い合っているんだ」

追われる側の見積もりも出ています。マスのチーム、モビスターのレーシングディレクター、マット・ホワイトは、テレビ局にこう話しました。「ガルには失わないかもしれない。でもプリモシュには、確実に失うだろう。どれくらいかって? もちろん当て推量だけど、90秒だと思う」

32.1kmで90秒。ログリッチの遅れは2分10秒。タイムトライアルの日だけでは、まだ足りない計算になります。

出典:Patxi Vila: 「Roglic está mejor de lo esperado」(ビラの発言のスペイン語原文。5週間の中断、ヘレスとアルグアシル、38分の努力)— esciclismo/EFE配信Rogličev šef razkril načrt za peto Vuelto(ファントゥーレンハウトの「第2休息日に同じ状況なら、いますぐサインする」。原出典はベルギーのオランダ語メディア HLN で、これはそのスロベニア語訳)— siol.netMore than two minutes is comfortable(マット・ホワイトがTNTスポーツに語った1kmあたり3秒・90秒の見積もり。英語)— CyclingnewsVuelta a España 2026 abandons(第15ステージに離脱者なし。アルペシン・プレミアテックは3人)— Cyclingnews

白いジャージの5位が、クライマーではない2人の名前を挙げた

ネットカンパニー・INEOSのオスカー・オンリは、この日チームのインタビューに答えています。総合5位で、ヤングライダー賞の白いジャージを着る23歳です。

2週間の総括はこうでした。「浮き沈みのあるレースだったと思う。何度かつまずいたけれど、グランツールでは普通のことだと思う」。暑さについては、「暑いのは好きなんだ。でもこれは、僕の好きな暑さとは別物だ。ツアー・ダウンアンダーくらいで、ここまで暑いのは経験がない」

そして、名前を挙げたいと彼が言ったのは、山で自分を運んだクライマではありませんでした。「ルーカスアクセルには特別に触れておきたい。ふたりはクライマーじゃないのに、山の日のずいぶん深いところまで僕のそばにいてくれた。ふたりが戦っているのを見ると、僕も力が湧くんだ」

ルーカス・ハミルトンはオーストラリア人です。東京五輪には急な代役として呼ばれ、ツール・ド・フランスを終えたその足で日本へ渡り、エースを支えて234kmを走りました。アクセル・ローランスはフランス人です。所属チームが解散し、移った先に登録枠がなくて若手育成のチームまで降りた——その翌年に、残り27kmからの独走で23歳以下(U23)の世界ロード王者になりました。山を専門としない選手が山の日にしていること——風よけになり、ボトルを運び、山の入口までエースを届ける——は、順位表に残りません。エースが名前を出さなければ、どこにも残りません。

木曜日には32.1kmの個人タイムトライアルがあります。「こっちのほうが本当の意味でのテストだと思う。モナコのはテクニカルな要素だらけで、かなり特殊だったからね」——開幕日のモナコも、9.4kmのタイムトライアルでした。

白いジャージを争う2番手は、30秒差のヤコブ・オムルゼです。総合でもオンリーのすぐ後ろ、6位につけている20歳で、第12ステージのカラル・アルを勝っています。「オムルゼルのことはよく知らないけれど、ここ数日で急に詳しくなってきたところだ」——オンリーはそう言って、最終週へ入りました。

出典:Interview: Onley ready for Vuelta third week(休息日にチームが公開した本人インタビュー。英語)— ネットカンパニー・INEOS公式La Vuelta España 2026 en corto(休息日のまとめ。総合5位とオムルゼルとの30秒差。スペイン語)— Ciclo21Cycling at the 2020 Summer Olympics – Men's road race(東京五輪男子ロードは234km、ハミルトンは71位)— Wikipedia (en)

チューダーは、初めてのグランツール勝利を持ってこの休息日に着いた

チューダー・プロサイクリングにとって、この3週間は初めてのブエルタです。そして2日前の土曜日、シエラ・デ・ラ・パンデラの山で、マルコ・ブレナがチームに初めてのグランツール勝利を持ち帰りました。2019年にスイスの若手育成組織として出発し、2022年に元スター選手ファビアン・カンチェラーラがオーナーになりました。

24歳のブレナーは、この大会の前半を体調不良と落車で失っていました。「ここまでは自分らしく走れていなかった。だから自分自身にも、ずっと僕のために懸命に働いてくれていたチームメイトにも、僕は上まで行けるんだと見せたかった。今日もチームメイトが2人ついていてくれた。ローレンス・ワーバウィリアム・バルだ。ふたりとも見事な仕事をしてくれた」——どちらもアメリカ人で、この日、44人が集団から先行した逃げに、ブレナーと一緒に乗っていた選手です。

カンチェラーラの言葉はこうでした。「最初に思ったのはチーム全体のことだった。今日勝ったのはマルコだが、これは全員の勝利だ。今年はいつも思いどおりに行ったわけじゃない。運も悪かったし、重圧もたまっていた。でもそれが自転車だ。ある日は負けて、次の日は勝つ」

このチームには、初めてのグランツールを走る選手が何人もいます。33歳のローラント・タールマもそのひとりです。父ユリウスは1980年代のプロで、3シーズンで消耗しきり、24歳でやめました。赤血球が通常の75%しかなく、重い鉄欠乏が見つかっていたそうです。「家に帰って、レース用の自転車を納屋に立てかけて、何年も取り出さなかった」と本人が振り返っています。息子は2025年の秋に「まだグランツールのスタートラインに立つ夢を見ています」と言い、その10か月後にここへ来ました。彼のチーム観はこうです。「このチームは、個人の結果に表れないときでもドメスティーの仕事を評価してくれる」

前日のコルドバで逃げに乗っていたファビアン・ヴァイも、今回が初めてのグランツールです。20歳のとき、体のケアやジムやメンタルコーチの費用を募って38人から支援を受けた選手が、いま初めて勝ったチームにいます。

出典:A Historic Win: Marco Brenner Claims Our First Grand Tour Stage Victory at La Vuelta(ブレナーとカンチェラーラの発言。英語)— チューダー・プロサイクリング公式Die Erinnerungen werden je länger, je schöner(父ユリウスの引退。赤血球が通常の75%、重い鉄欠乏、「Ich kam nach Hause, stellte das Rennvelo in den Schopf」。ドイツ語)— Schweizer BerghilfeRoland Thalmann extends and completes 2026 roster(グランツール出場の夢とチーム観。英語)— チューダー・プロサイクリング公式Optimale Konditionen abseits des Rennrades(ヴァイスのクラウドファンディング。ドイツ語)— ibelieveinyou.ch

これまで最長8日しか続けて走ったことのない20歳が、15ステージを終えた

ロット・アンテルマルシェのヤルノ・ウィダーは20歳で、これが初めてのグランツールです。ここへ来るまで、続けて走った最長の日数は8日。この休息日で、15ステージを走り終えました。

第4ステージのアンドラでは、ポガチャに次ぐ2位。開幕から3勝して総合首位を走り、第8ステージの落車でこの大会を去った世界王者です。第9ステージのアイタナで7位、第13ステージでは逃げに乗って4位。そのたびに、彼は同じ質問を向けられてきました。総合を狙っているのか、と。第7ステージでポガチャルに5分近く遅れた日、彼は記者たちにこう答えています。「僕を総合の選手にしているのはあなたたちだ。信じたくないなら、それはそちらの問題だよ」「時間を失って落ち込んでいるかって? いや。僕は総合のために来ていないから、そんなことはどうでもいい」

チームのパフォーマンスコーチ、オリバー・デラーイの説明は、もう少し長いものでした。第14ステージを前にした土曜日に、彼はこう話しています。「ヤルノは軽くて、登りはとても強い。いちばんの武器は3分から10分の値だ」——3分から10分のあいだ出し続けられる出力のことで、つまり短い坂での爆発力です。だからベルギー南部アルデンヌの丘を走るレースが向く。「長い峠は? ポガチャルやヴィンゲゴーを基準にすると、そこでは少し落ちる」——ツール・ド・フランスを勝ってきたふたりのことです。

「だから僕らは、プレッシャーをかけずに結果を狙うためにブエルタへ来た。その意味ではもう成功だ。最高の選手たちと張り合えることを見せたんだから」。そして、こう続けました。「いまのところ山岳ステージからの回復はいい。でもまだ半分だ。3週間をどう消化するのか。それはこれから分かることだ」

そこから2ステージが過ぎて、この休息日です。ウィダールの1年目は不運続きでもありました。1月半ばに体調を崩し、春の丘のレースへ向かう途中で練習中に落車して膝を痛めて4週間自転車に乗れず、夏にもまた体調を崩している。このブエルタを最後まで走り切ること自体が、すでにひとつの成功だ——デラーイの話は、そこへ着きます。

🔰 初心者向けメモ: 3週間の長さは、若い選手には初めての試験になる

グランツールが若い選手に難しいのは、山が高いからだけではありません。単純に、長いからです。1週間のステージレースをいくつ走っていても、15日目や19日目の体がどうなるかは、そこまで行った人にしか分かりません。

だからチームは、初めての選手に総合順位の目標を置かないことがあります。順位を守るというのは、調子の悪い日にも無理をするという意味だからです。目標がなければ、悪い日は流して、良い日にだけ手を挙げればいい。

もうひとつの分かれ道は、標高の高い土地にこもる高地合宿です。総合を狙う選手はシーズンの何か月かをそこで暮らします——デラーイの言い方を借りれば「半年のあいだ山の上に座っている」こと。その時間を使えば、ほかのレースで学び、結果を出し、経験を積む機会は減ります。山にこもるか、レースを走るか。20歳の1年をどちらに使うのかは、まだ決めなくていい——彼の説明は、そういう話でした。

出典:14e in de Vuelta, maar Jarno Widar wil stempel「klassementsman」niet(第14ステージ前日の記事。デラーイの説明とウィダールの発言。オランダ語)— SporzaJarno Widar debutará en una gran vuelta como líder del Lotto-Intermarché(続けて走った最長が8日であること、チームが総合の目標を置かないこと。スペイン語)— esciclismoJarno Widar heads into Vuelta rest day with another top-ten finish(第9ステージ7位。英語)— ロット・アンテルマルシェ公式

今日の寄り道

自転車をちょっと離れて、ステージが駆け抜けた土地の話。

食文化ハブーゴの生ハム

翌日のスタート地コルテガナは、シエラ・デ・アラセナ・イ・ピコス・デ・アローチェ自然公園の中にあります。「ハブーゴ」を名乗れる生ハムは、この公園まわりの31の町でつくられたものだけ——つくる場所と作り方を定めた原産地呼称です。デエサと呼ばれる放牧地で自由に育った100%イベリコ種の豚が、ドングリの落ちるモンタネーラの時期に木の実と自然の草だけを食べ、山の空気と蔵の中で仕上がっていきます。7kgを超える大きな腿は、仕上がるまでに最低730日——2年です。その土地を、プロトンはこの火曜日の午後に通り抜けます。

伝統行事同じ日の、もうひとつの人出

9月6日から8日にかけて、同じ山の中のアラハルという町で「レイナ・デ・ロス・アンヘレスの巡礼」が行われます。町を見下ろす岩山ペーニャ・デ・アリアス・モンターノの上に16世紀の礼拝堂があり、本祭にあたる8日には数千人の巡礼者がそこへ集まります。その9月8日が、第16ステージの火曜日です。同じ山に、自転車を待つ人と巡礼へ向かう人が同時に集まることになり、地元では両方に向けた交通規制の時刻表が出ました。

写真: Wikimedia Commons(フリーライセンス)

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この記事を書いた人

Grand Tour Hub 管理人

ロードレースの面白さを初心者目線で伝えるファンサイトの管理人。いちばん好きなのは、ゴール直前までもがいてスプリンターを発射させたアシストが、仲間の勝利を確信して、自分はまだゴールの手前なのにガッツポーズをする瞬間です。

※ 観戦記は管理人による独自の執筆コンテンツです。選手タイプの解説はタイプ図もどうぞ。